RIP および OSPF の高度なルーティング サービスの設定

route ars-nsm - 高度なルーティング サービス ネットワーク サービス モジュール。このコンポーネントは、インターフェース バインディングおよび再配布可能ルートなど、中核となるルータ機能を制御します。
route ars-rip - RIP モジュール。RIP ルータを制御します。
route ars-ospf - OSPF モジュール。OSPF ルータを制御します。

一般に、SonicWALL を大部分の RIP 環境や OSPF 環境に統合するために必要な機能は、すべてウェブ ベースの GUI を通じて利用できます。CLI の追加機能により、より高度な設定が可能になります。ARS CLI コマンドの完全セットについては、付録を参照してください。

既定では、高度なルーティング サービスは無効となっているため、有効にして使用する必要があります。「ネットワーク > ルーティング」ページの上部には、「ルーティング モード」ドロップダウン メニューがあります。「高度なルーティングの使用」を選択すると、「ネットワーク > ルーティング」ページの上部は次のようになります。

RIP および OSPF ルーティング プロトコルの動作は、インターフェース依存です。各インターフェースと仮想サブインターフェースに RIP と OSPF を個別に設定でき、各インターフェースで RIP と OSPFの両方のルータを実行できます。

以下のように、高度なルーティング プロトコルから受け取った既定ルートの RIP と OSPF を設定します。

RIP の設定

インターフェース上で RIP ルーティングを設定するには、そのインターフェースの行の「RIP 設定」列にある設定アイコンを選択します。これにより、「RIP 設定」ウィンドウが表示されます。

RIP — 以下のいずれかのモードをドロップダウン メニューから選択します。
無効 - このインターフェースでは RIP は無効です。
送受信 - このインターフェースの RIP ルータは更新を送信したり、受信した更新を処理します。
送信のみ - このインターフェースの RIP ルータは更新を送信するだけで、受信した更新の処理はしません。これは基本的なルーティング実装に似ています。
受信のみ - このインターフェースの RIP ルータは受信した更新のみ処理します。
パッシブ - このインターフェースの RIP ルータは受信した更新は処理せず、CLI neighbor コマンドで指定された近隣 RIP ルータに更新を送信するだけです。このモードは、ars-rip CLI から高度な RIP オプションを設定する場合にのみ使用する必要があります。
受信 (「送受信」モードおよび「受信のみ」モードで使用可能)
RIPv1ブロードキャスト RIPv1 パケットのみ受信します。
RIPv2マルチキャスト RIPv2 パケットのみ受信します。RIP ルータの実装の一部 (SonicWALL 機器の基本ルーティングなど) にはブロードキャストまたはマルチキャスト形式でRIPv2 を送信する機能がありますが、RIPv2 パケットはマルチキャストで送信されます。
送信 (「送受信」モードおよび「送信のみ」モードで使用可能)
RIPv1ブロードキャスト RIPv1 パケットを送信します。
RIPv2 - v1 互換 - RIPv1 と互換性のあるマルチキャスト RIPv2 パケットを送信します。
RIPv2マルチキャスト RIPv2 パケットを送信します。
スプリット ホライズン - スプリット ホライズンを有効にすると、取得元のルータの更新で送信されたルートは含まれません。これはルーティング ループを防止する一般的な RIP メカニズムです。最大ホップ数 を参照してください。
ポイズン リバース - ポイズン リバースはスプリット ホライズン操作のオプション モードです。取得したルートを含めないのではなく、ルートは無限メトリック (16) によって送信され、到達不可であることが示されます。最大ホップ数 を参照してください。
パスワードを使用 - このインターフェースで識別用に最大 16 文字の英数字のテキスト形式によるパスワードの使用を有効にします。
既定のメトリック - 他のルーティング情報元(既定、静的、接続、OSPF、VPN)からルートを再配布する際に使用されるメトリックを指定するために使用します。既定値 (未定義) は 1 で、最大値は 15 です。
管理距離 - 管理距離値は送信先へのルートが複数あり距離が短い方が優先される場合に、ルータがパスを選択する際に使用されます。既定値は 120、最小値は 1、最大値は 255 です。
デフォルト ルートを登録する - このチェックボックスは、RIP システムへの SonicWALL の既定ルートの通知を有効または無効にします。
静的ルートを再配布する - RIP システムへの静的 (ポリシー ベース ルーティング) ルートの通知を有効または無効にします。メトリックはこの再配布に明示的に設定できます。または、「既定のメトリック」設定で指定した値 (既定値) を使用できます。
接続されたネットワークを再配布する - RIP システムへのローカルに接続されたネットワークの通知を有効または無効にします。メトリックはこの再配布に明示的に設定できます。または、「既定のメトリック」設定で指定した値 (既定値) を使用できます。
OSPF ルートを再配布する - OSPF 経由で取得したルートの RIP システムへの通知を有効または無効にします。メトリックはこの再配布に明示的に設定できます。または、「既定のメトリック」設定で指定した値 (既定値) を使用できます。
リモート VPN ネットワークを再配布する - RIP システムへの静的 (ポリシー ベース ルーティング) ルートの通知を有効または無効にします。メトリックはこの再配布に明示的に設定できます。または、「既定のメトリック」設定で指定した値 (既定値) を使用できます。

RIP 経由で取得したルートは、「ルート ポリシー」テーブルに「OSPF または RIP ルート」として表示されます。

OSPF の設定

以下のような、簡単なネットワークの例を考えてみます。

バックボーン (エリア 0.0.0.0) が ファイアウォール上の X0 インターフェースとルータ A 上の int1 インターフェースで構成される OSPF ネットワークがあります。残りの 2 つのエリア、0.0.0.1 と 100.100.100.100 は、それぞれ ABR ルータ A のインターフェース int2 と、ファイアウォール上の X4:100 VLAN サブインターフェースを経由してバックボーンに接続されています。

X0 および X4:100 インターフェース上で OSPF ルーティングを設定するには、インターフェースの行の「OSPF 設定」列にある設定アイコンを選択します。これにより、以下のウィンドウが表示されます。

OSPFv2 — 以下のいずれかの設定をドロップダウン メニューから選択します。
無効 - このインターフェースでは OSPF ルータは無効です。
有効 - このインターフェースでは OSPF ルータは有効です。
パッシブ - このインターフェースでは OSPF ルータは有効ですが、種別 1 LSA のルータ リンク通知を使用して接続ネットワークのみをローカル エリアに通知します。これは、OSPF ルータを ASBR として動作させ、種別 5 LSA (AS 外部リンク通知) を使用してスタブ エリア以外のすべてに通知を送信する「接続されたネットワークを再配布する」オプションとは異なります。詳細については、OSPF の条件 を参照してください。
Dead 判断間隔 - この期間 Hello を受け取らない場合、LSDB のエントリが削除される。既定値は 40秒で、最小値は 1、最大値は 65,535 です。近隣関係が正しく確立されるように、この値はセグメント上の他の OSPF ルータと一致させてください。
Hello 送出間隔 - Hello パケット間の間隔。既定値は 10 秒で、最小値は 1、最大値は 65,535 です。近隣関係が正しく確立されるように、この値はセグメント上の他の OSPF ルータと一致させてください。
認証 - 近隣関係が正しく確立されるように、この設定はセグメント上の他の OSPF ルータと一致させてください。
無効 - このインターフェースでは認証は使用されません。
単純パスワード - このインターフェースの OSPF ルータによる識別用にテキスト形式のパスワードが使用されます。
メッセージ ダイジェスト - MD5 ハッシュを使用してこのインターフェースの OSPF ルータが安全に識別されます。
OSPF エリア - OSPF エリアは IP または 10 進法で表示できます。例えば、X4:100 に接続されたエリアは、100.100.100.100 または 1684300900 と表示できます。
OSPFv2 エリア種別 – 以下の設定の詳細については、OSPF の条件 を参照してください。
標準 - すべての適用可能な LSA 種別を送受信します。
スタブ エリア - 種別 5 LSA (AS 外部リンク通知) は受け取りません。
完全スタブ エリア - LSA の種別 3、4、5 は受け取りません。
半スタブ エリア - 種別 7 LSA (NSSA AS 外部ルート) を受け取ります。
完全スタブ NSSA - 種別 1 および 2 の LSA を受け取ります。
インターフェース コスト - このインターフェース上でのパケット送信のオーバーヘッドを指定します。既定値は 10 で、通常イーサネット インターフェースを示す場合に使用します。最小値は 1 (高速イーサネットなど) で、最大値は 65,535 です (パディングなど)。
ルータ優先順位 - ルータ優先順位の値はセグメントの指定ルータ (DR) を決定する際に使用します。値が高いほど、優先順位は高くなります。優先順位が同じ場合は、ルータ ID がタイブレーカとして機能します。値を 0 に設定すると、このインターフェースの OSPF ルータは DR 状況に対して不適格となります。既定値は 1 で、最大値は 255 です。
OSPF ルータ ID - ルータ ID は IP アドレス表記した任意の値に設定できます。SonicWALL 上の IP アドレスのいずれとも無関係で、OSPF ネットワーク内の任意の一意の値に設定できます。
ABR 種別 - 互換性を維持するために、この OSPF ルータを参加させるトポロジを指定できます。以下のオプションがあります。
スタンダード - RFC2328 に完全に準拠した ABR OSPF 動作です。
Cisco - ABR フラグを設定する前にバックボーンを設定してアクティブにする、Cisco の ABR 動作との相互運用性用。
IBM - ABR フラグを設定する前にバックボーンを設定してアクティブにする、IBM の ABR 動作との相互運用性用。
ショートカット - ショートカット エリアでは、ABR ルータがエリア 0 に接続されているかどうかにかかわらず、バックボーン以外のエリアにトラフィックを低メトリックで送信できます。
メトリック - 他のルーティング情報元(既定、静的、接続、OSPF、VPN)からルートを再配布する際に使用されるメトリックを指定するために使用します。既定値 (未定義) は 1 で、最大値は 16,777,214 です。
デフォルト ルートを登録する - このインターフェース上の OSPF システムへの SonicWALL の既定のルートの通知を制御します。以下のオプションがあります。
無効 - OSPF システムへの既定のルートの通知を無効にします。
WAN 動作時 - WAN がオンラインのときに、OSPF システムへ既定のルートを通知します。既定のルートは、常にLSA 種別 5 を使用して外部種別 2 として通知されます。
常に有効 - OSPF システムへの既定のルートの通知を有効にします。既定のルートは、常にLSA 種別 5 を使用して外部種別 2 として通知されます。
静的ルートを再配布する - OSPF システムへの静的 (ポリシー ベース ルーティング) ルートの通知を有効または無効にします。
補足:以下が、再配布されたすべてのルートに適用されます。メトリックはこの再配布に明示的に設定できます。または、「既定のメトリック」設定で指定した値 (既定値) を使用できます。オプションのルート タグ値を追加して、他のルータがこの再配布されたルートを識別しやすくすることができます (既定のタグ値は 0 です)。再配布されたルート通知は LSA 種別 5 で、種別は種別 1 (内部リンク コストを追加) または種別 2 (外部リンク コストのみを使用) として選択できます。
接続されたネットワークを再配布する - OSPF システムへのローカルに接続されたネットワークの通知を有効または無効にします。
RIP ルートを再配布する - RIP 経由で取得したルートの OSPF システムへの通知を有効または無効にします。
リモート VPN ネットワークを再配布する - RIP システムへの静的 (ポリシー ベース ルーティング) ルートの通知を有効または無効にします。

ルーティング プロトコル」セクションには、すべてのアクティブな OSPF ルータの状況がインターフェース別に表示されます。

状況 LED はアクティブな近隣があるかどうかを示すもので、その上にカーソルを置くと詳細が表示されます。

ルーティング ポリシー」セクションには、OSPF が「OSPF または RIP ルート」として取得したルートが表示されます。

トンネル インターフェースに対する高度なルーティング設定

VPN トンネル インターフェースを高度なルーティングのために設定できます。そうするには、トンネル インターフェース設定の詳細タブで、高度なルーティングを有効にする必要があります。詳細については、トンネル インターフェースの追加 (1033 ページ) を参照してください。

トンネル インターフェースに対する高度なルーティングを有効にすると、「ネットワーク > ルーティング」ページの「高度なルーティング」テーブルのリスト内に、他のインターフェースと一緒に表示されます。

高度なルーティングのオプションを設定するには、設定したいトンネル インターフェースの「RIP 設定」または「OSPF 設定」列で編集アイコンを選択します。

トンネル インターフェースに対するこの RIP と OSPF の設定は、従来のインターフェースに対する設定と、よく似ていますが、RIP と OSPF の設定ウィンドウの新しい「グローバル多種設定」見出しの下に追加で 2 つの新しいオプションがあります。

グローバル多種設定

トンネル インターフェースは物理インターフェースではなく固有の IP アドレスを持たないため、別のインターフェースの IP アドレスを "借りる" 必要があります。その結果、トンネル インターフェースに対する高度なルーティング設定には、トンネルの送信元と送信先の IP アドレスを指定するための、以下のオプションが含まれます。

IP アドレスの借用元 - IP アドレスがトンネル インターフェースに対する送信元 IP アドレスとして使用されているインターフェースです。
リモート IP アドレス - トンネル インターフェースが接続されるリモート ピアの IP アドレスです。別のトンネル インターフェースを持つ SonicWALL 対 SonicWALL の設定の場合は、これはリモート ピア上のトンネル インターフェースの借用するインターフェースの IP アドレスになります。

補足:IP アドレスの借用元」と「リモート IP アドレス」の値は、トンネル インターフェースの RIP と OSPF 両方に適用されます。RIP に対するこれらの値の 1 つを変更すると、OSPF に対する値も変更され、逆もまた同じです。
高度なルーティングのためのトンネル インターフェース設定のガイドライン

高度なルーティングのためにトンネル インターフェースを設定する際に、以下のガイドラインが成功の手助けになります。

ネットワーク設定の特定の状況によっては、トンネル インターフェースが正しく機能することを確実にするために、これらのガイドラインは完全ではないことがあります。しかしこれらのガイドラインは、潜在的なネットワーク接続性の問題を回避するであろう SonicWALL の最良の手順です。